私が理想とするスポーツ選手の一人に、1980年のレークプラシッド冬季オリンピックの「パーフェクト ゴールドメダリスト」(500・1500・3000・5000・10000mの全種目で金メダル)エリック・ハイデン選手がいます。彼は、この時名門UCLAの21歳の医学生でした。この伝説的な快挙も、前回のインスブルックオリンピックでは入賞すら出来なかった彼が当時の常識では考えられないような独創的な練習と、太ももの太さが76㎝にもなるようなハードなトレーニングを重ねた結果によるものでした。この栄光の後、彼は医学部に復学して整形外科医となります。また妹のベス・ハイデン(1500m銅メダリスト)の影響から、医者としてのキャリアを積みながら、世界最高峰の自転車レースであるツールドフランスにも出場するような自転車レーサーにもなっています。
 持って生まれた能力だけでは、自分の目標とするところに到達出来なかった彼は、そこから本当の意味での努力を積み重ねました。急激な成長に興味を持った世界のトップスケーター達が、彼と彼のコーチであったダイアン・ホルム(1972年札幌オリンピック1500m銅メダリスト)の元を訪れ合同練習を申し込んだそうですが、あまりのハードな内容に皆音をあげてついて行くことが出来なかったそうです。レベルの違いはあれど、自分が自信を持って努力したと言える為には、このように他者からの評価も大事な要素の一つとなるように私は思います。
 彼が言った言葉に「そこに至る過程でいかに努力したか そしてベストを尽くしたかどうかが重要なのだ 大切なのはここまでの過程をこの先の人生にどうつなぐかだ」というのがあります。私は、最後の「これからの人生に・・・」という部分を指導者として重要に考えているので彼のこの話を引用する事にしました。スポーツ選手に対するセカンドキャリア教育と言うのは、日本ではなかなか浸透してこなかった考え方ですが、好きになって一生懸命取り組んだものが後々の人生に役に立つ形で生かされないようでは意味がないと思います。その為には、私たち指導者が常に将来を見据えたビジョンを持ちながら、今目指すべき道を示さなくてはいけないと思います。まだまだたくさん勉強しなければいけないことだらけですが、子どもたちが頑張っている事に報いる為にも精進を怠らないようにしたいと思います。